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着生シダ、発芽

着生シダの胞子を培養してみました。

ホテイシダ、イワオモダカ、オシャグジデンダと続けて樹上着生シダをまとめてみましたが、彼等は棲み家の樹木が朽ちても、移動することができません。
少なくとも自然界では、繁殖の100%を胞子に頼っているはずです。

胞子からシダの姿に育つまで、どれくらいの時間がかかるのか検証も兼ねて実験してみました。

葉の裏にできた胞子嚢群は、秋頃には熟して胞子がこぼれ始めます。
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プレパラートの上に熟した胞子を落とした状態。ちなみにホテイシダです。
黄色っぽい大きな玉が胞子嚢で、周りに散らばった小さく黄色い粒が胞子。中央やや右の方に、割れて胞子がこぼれた胞子嚢が2つ写っています。
自生状態で胞子が熟した状態で見るのは至難の業なので、落下個体の葉から直接サンプリングするか、落下個体の一部を持ち帰って再生させ、胞子を得ることになります。

胞子は、園芸用ミズゴケか、ピートモス(泥炭)を加熱殺菌したものを培地として、普通のタネと同じように播けば発芽し、生育する様子が観察できます。
乾燥させないように、ラップで蓋をしておくと管理が楽です。

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ミズゴケ培地に播いてから5ヶ月。
青海苔みたいに見えるのが胞子から発芽して育った前葉体と呼ばれる器官で、種子植物の双葉のような感覚です。

ちなみにこれは殺菌が面倒だったので、ミズゴケを詰めたプラスチックコップを電子レンジでチンして培地にしました(笑
加熱でコップは変形しましたが、思いのほか順調に育っています。
前葉体を顕微鏡で観察してみると…
P10300091
倍率40倍。
拡大しても、やっぱり青海苔、、たこ焼きに乗っていても違和感無い雰囲気で。

緑色の部分は葉と同じように光合成をする部分で、下の方に見える黒い塊が仮根。仮根は種子植物でいう根毛のような役割をする器官で、足場になる場所にくっついて固定したり水分を摂ったりします。

前葉体は平たいハート形をしている種類が多いですが、種類によって若干の差があります。この写真はホテイシダですが、随分と縁が波打っています。
ハート形の真ん中を縦に通るように、仮根と造精器、造卵器という器官が並んでいます。

要するに花に相当する役割をする器官がシダの前葉体なのですが、どうも自分はシダ植物の繁殖形態がうまく説明できず…というより勉強途中なので、詳しくは皆さん調べてみてください。

P10300061
オシャグジデンダの前葉体はこんな雰囲気で、ホテイシダとはかなり趣が異なります。オシャグジデンダは枝サンゴのように枝分かれしていました。これは培養していて驚きました。

根本付近で2又に枝分かれした前葉体が、その先でさらに2~3回枝分かれしている様子が見受けられます。

それにしても、胞子を播いてから半年でようやく肉眼で見えるレベルとは、種類を判別できるサイズまで育つのは何年先なのでしょうか?
よほど湿度が高い環境でないと育たないのか、それとも実は相当な乾燥耐性をもっているのか、どちらかでないと生きられない成長速度のような気がします。
2011年1月段階では想像を上回るスローペースで成長中です。

もうちょっと未来の姿になりますが、前葉体はやがて受精してお馴染みのシダの姿をした胞子体を発生させます。
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同じ仲間の着生シダはここまで育っていないので、本州産のマツザカシダの仲間。胞子播き後15ヶ月程度。

亜熱帯気候に多い南方系の種ですが、古い石垣などに着生していることが多いので、生育条件は似ているはずです。

そんなわけで、
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↑こんな姿に思いを馳せながら、気長に付き合っていこうと思います。

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コメント

毎回読んでていつも思うのは植物に対する「愛」。動物写真家が多かれど、はたまた学者が多くてもこの愛情あふれた文章は貴方にしか書けないと思うのですよ。
難しい知識だけでは人は興味を持たない。
そこに気持ちがあるからこそ人があつまって、その人が面白いから話を聞こうって思うんだと思います。
膨大な知識と人々の意識には距離があり
植物は話せないからこそ、Planterさんならでわの役目があるんだって思います(o^-^o)

投稿: いたち | 2011年1月15日 (土) 23時07分

いたちさん>久々のコメントありがとうございます。

植物への愛ですか…いつも全く無意識に記事を書いていたので、言われてみてハッとしました.
じつは以前と比べると、植物とか自然に対する自分の熱意がどんどん冷めているような気がして、ブログの更新も飛び飛びになってしまっていました。書き手が楽しく語らないと、見てくれる人にも楽しさが伝わらないですし…

これからも気が向いた時に更新していくので、時々遊びに来てください(*^^*)

投稿: Planter | 2011年1月20日 (木) 01時22分

はじめまして、夏稀(なつき)と申します。私はヨーロッパで登山ガイドの仕事をしています。
この度は、故郷である北海道の自然が恋しくなり、ネットを漂っていましたらこちらに辿り着き、勝手ながら過去のblogをたくさん読ませて頂きました。洞爺湖の風景や小さな草花の写真を見てとても懐かしい気持ちになりました。
私は植物の育て方とか種類についてはあまり詳しくありませんが、自然の中で綺麗に咲いてる草花がとても大好きです。プランターさんの植物に対する愛情が伝わってきました。

聞きたいことがあるのですが、北海道の自然は今どのような状況でしょうか。私が日本を離れる4年前既に北海道はシカで草花が減少してる状態で胸が痛かったです。そして今、中国資本が北海道の森林を20%も買い上げてると、これについてはヨーロッパでも有名です。北海道の自然は一体どうなるんでしょう。心配です…。全く場違いな質問でしたら、ごめんなさい。
北海道が懐かしくなったら、またこちらへお邪魔させていただきたいと思います。

長々と失礼致しました。

投稿: 夏稀 | 2011年2月 9日 (水) 01時50分

夏稀さん>はじめまして、コメントありがとうございます!フィールドのプロの方にも見て頂けるとは、嬉しいような恥ずかしいような複雑な気分です(笑

ブログの内容は感覚的に書いたものが殆どですが、何かしらお役に立てれば嬉しく思います。

北海道の自然について最近変わった事といえば、やはり増えすぎたシカによる植生被害でしょうか。

夏稀さんが北海道に居られた頃から、シカ問題はマスコミ等にも取り上げられていたと記憶していますが、現在も改善の兆しは見られないと思います。むしろ、シカの分布域そのものが広がっているので、今までシカと無縁だった地域の高山植物帯にも被害が広がり大変な状況です。札幌周辺でもエゾシカが普通に見られるようになってしまいました。

増えすぎたシカを駆除することで根本解決を図ろうと色々な機関が協力して対策を進めていますが、何せシカが多すぎることと、法的な問題などもあり対策は難航しているようです。

自分の卒論のテーマがまさに「植生とシカの関係」なので、本当に悩ましい問題です(…汗

森林の買い占め問題については、自分自身あまりよく理解出来ていないので、コメントは控えさせていただきます。

また気になる事などありましたら、コメント頂けると嬉しいです。

投稿: Planter | 2011年2月12日 (土) 18時17分

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