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一日一草 ~ホテイシダ~

森を歩いていると、時々「なんでこんな場所に?」と首を傾げたくなるような場面に遭遇するものです。

普段見かけない鳥が居たり、妙な場所に木が生えていたりとか。
そういう例の大半は、「うっかり間違って…」という単純な理由で説明がつくものです。

しかし中には、成るべくしてそうなった者もあります。
たとえば、生きた木の上に生える植物。

ヤドリギのような寄生植物ではなく、アパートでも間借りするかのように、ただ住居として樹木を利用する植物は、じつは沢山の種類があります。
今日のテーマ「ホテイシダ」も、その一つです。

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ホテイシダの棲み家は、こういう広葉樹の大木。
写真では分かりにくいですが、胸高直径1メートル以上あるミズナラです。軽く1世紀以上は生きているでしょう。

太古の面影が残る原生林の樹上を見上げると、幹や太い横枝にホテイシダが見られます。
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ちょうどこんな雰囲気に。
樹冠の緑に埋もれて目立ちませんが、うっすら張り付いた苔のマットの中から、特徴的なウエーブを持つ葉が広がっています。

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まれに低い位置に付いていますが、基本的には高い樹上に生育するので双眼鏡で観察することになります。バードウォッチングならぬ、プラントウォッチング?
1株見つけると次々に観察することができます。

樹上生活専門のライフスタイルを持つ植物は高温多湿の熱帯雨林や雲霧林に多いですが、そこそこ温暖で雨霧に恵まれた日本でも、熱帯と遜色ないくらい多様な種類が自生します。

地上の植物と違って寒さや乾燥から守ってくれる土が無いので、生育できる条件は気候に支配されています。そんなハンデを克服して、マイナス20℃近い低温と吹雪に晒される北海道まで分布を広げたホテイシダは、驚異的な適応力ではないでしょうか。

着生植物と呼ばれる樹上生活者のグループの生活圏として、世界的に見ても北海道は最北クラスです。北限は詳しく知りませんが、自分は道北の紋別地方以北では見ていません。

それにしても、なぜこんな過酷な環境に耐えながらも、ホテイシダは樹上という環境を棲み家に選んだのでしょう?疑問は尽きません。

しかし、生きた木の上に生活するということは、樹木と運命を共にすることも意味します。
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ある雨上がりの日、いつものフィールドで年老いたシナノキが最期を迎えました。
折れ口を見ると、芯材の部分が腐って空洞になっていました。きのこの菌に長年かけて蝕まれてきた様子でしたが、その姿は天寿を全うした雰囲気でした。

そんな大木の幹に付いていたのが、上の写真のホテイシダ。
森林伐採で減少傾向にあるホテイシダが近所に生育していた事自体も驚きでしたが、こんな巨大な塊がただ朽ちていくのも、自然の流れとはいえ残念です。
葉の裏に付いた胞子嚢群が茶色く熟していたので、最後の胞子を飛ばして子孫を残していることを願うばかりです。

そんな放浪生活で世代を繋いできたホテイシダが生きられる森が残っているなんて、素敵なことです。

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