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釣鐘人参

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蒸し暑い夏の日差しと、心地よい秋風が迷い気に入り乱れるこの季節。
ススキの繁る野山を歩くと、風鈴のような姿をした涼しげな花に出会えます。

その名もツリガネニンジン。
うつむいて咲く花の形を釣鐘に見立て、朝鮮人参に似た白く太い根を持つことから付けられた名です。ふつう目に触れない根がネーミングの由来になっているということは、ただ綺麗な花というだけでなく、食用や薬用として古くから生活に根差していたことをうかがわせます。

実際、かつて根を去痰・鎮咳の薬にしたり、現在でもトトキと呼んで若芽を食べたりと、人の暮らしと繋がりが深い草です。美味しいらしいので、いずれ沢山見つけたら食べてみたいと思っていますが、まだ叶わずにいます。

そんなツリガネニンジンですが、北はサハリンや千島列島から南は九州まで広く分布しているためか、生育環境によっていろいろな変異が見られます。

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よく見る、山野のススキ原に咲いていた個体。
周りの草に寄り掛かるように、1mくらいの細い茎を伸ばして涼しげに花を開いています。いわゆる「典型的な」ツリガネニンジンと言えるでしょうか。

ところが、同じツリガネニンジンでも海岸草原に咲いている個体は、また違った趣を持っています。

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こんな風に、周りの草に合わせるかのように草丈は低く、がっしりとした姿で咲き誇っています。20~70㎝くらいで咲き、株立ちになることが多いので、高山植物的な趣を感じます。高山草原や海岸の風衝地(常に吹きっ晒しの場所)に生える丈が低い系統はハクサンシャジンと呼ばれ区別されることが多いようです。

そして、こんな変異も。
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これも上の写真と同じ海岸で撮影した個体ですが、細かな白い毛が花や花茎に密生しています。全く無毛の個体と混生しているのに、中間的な個体がまったく見られなかったのが不思議です。

ツリガネニンジンのように色々な環境に見られる植物は、環境によって自分の姿を変えて生き延びています。自分で動くことが出来ない植物にとっては、気に入った環境を求めるよりも、自分から周りに合わせる生き方を選ぶ方が賢明だったのでしょうか…

ところで、ツリガネニンジンが生育している草原では他にもたくさんの秋の花たちが見られます。秋の七草に代表されるような、オミナエシやナデシコ、オミナエシなどは、ツリガネニンジンが生きてゆけるような、安定した乾き気味な草地の住人です。

道端にツリガネニンジンの花を見かけたら、周りをよく見てみると、日本の原風景で有ったであろう花たちが、ひっそりと顔を出してくれるかもしれません。

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