高気密住宅での洋蘭の栽培について

 洋蘭の育て方を紹介している栽培書やインターネットサイトなどを見ると、多くの洋蘭は寒さに弱いことから、冬は暖かい温室や部屋の窓辺に取り込むことを勧めていると思います。特に初めて洋蘭を手にした人の多くは、温室を持っていないでしょうから、普通の部屋の窓際に置くことになるはずです。

 しかし、部屋の窓辺とはいっても、住んでいる家によって環境は色々です。洋蘭の栽培には、外からの冷気をシャットアウトでき、常夏のように暖かい高気密住宅が最適と思われがちですが、実際にはそうとも言いきれない事もあります。

 このページでは、温室を持っていない私が、10年以上にわたって寒冷地の高気密住宅で洋蘭を育てて感じた私見を基に、高気密住宅での洋蘭栽培について考察してみたいと思います。



◆高気密住宅のメリット(利点)◆

 洋蘭を栽培する場所としての高気密住宅のメリットは、言うまでもなく温度を高く保てることです。外から吹き込む冷気が洋蘭に直接当たることもないので、窓ガラスにギリギリの場所に鉢を置いても、凍傷害を受ける危険がありません。


◆高気密住宅のデメリット(欠点)◆

 すべての洋蘭に共通するデメリットは、「空気が乾燥しすぎる」こと。本来、森林に自生している洋蘭は、常に高めの湿度を好むので、あまり空気が乾いていると葉から水分を奪われて弱ってしまいます。冬は元々空気が乾燥しがちになりますが、気温が高く、湿気の供給源が無い室内は余計に乾燥してしまいます。

 また、洋蘭のなかには、15℃前後くらいの低温に遭遇しないと花芽を付けないものもあります。鉢花として一般的なノビル系デンドロビウムや、シンビジウムの多くがそうです。このような洋蘭は、人間にとって快適な20℃台の気温を保っていると、株がいくら立派に育っても、いつまで経っても花が咲かないことがほとんどです。



◆高気密住宅で洋蘭を元気に育てるポイント◆

 以上に書いたように、冬もあたたかい高気密住宅は、洋蘭を育てる場所としてはメリットもデメリットもあります。

 すべての洋蘭に共通する元気に育てるポイントは、湿度を高く保つことです。湿度は50%を切らなければ、乾燥に弱い種類以外はそれなりに生育すると思います。広い部屋では、加湿器を置いても案外と効率が悪く、電気代が掛かるばかりですが、室内に日常的に洗濯物を干したり、水槽を置くだけでもある程度は効果が得られます。

 ただし、加湿は家が傷まない程度に、ほどほどに留めておきましょう。洋蘭を大事にするあまり家を腐らせて補修工事をするくらいなら、初めから小さな温室を建てたほうが安上がりですからね。



◆低温に遭遇しないと花芽を付けない洋蘭の咲かせ方◆

 結論から言ってしまうと、ノビル系デンドロビウムやシンビジウムなどの蘭は、冬場はコタツが欲しいくらい寒い(ただし凍結はしない)住宅に向いていて、常夏のように暖かい住宅では花を見るのは難しいです。

 でも、どうしても咲かせたいという方のために、以下に3つの方法を紹介します。

 まず一つ目が、室内の設定温度を下げること。しかしこれでは家が寒すぎますし、そこまでして花を見たいか?と家族から反対を受けるでしょう(笑)。なので、あまりおすすめはできません。

 二つ目は、ちょっと荒業ですが、寒さで株が痛む寸前まで野外に置いておき、自然の低温にさらす方法です。しかし、耐寒性には品種差や個体差が大きいので、寒さに耐える限界を見誤ると枯らすことになりますし、寒冷地では気温が急激に下がりすぎて、十分な低温期間が確保できない年も少なくありません。私の家では他に方法が無いので、仕方なくこの方法で花芽分化をさせています(もちろん失敗もあります)。

 三つ目は、出窓やサンルームがある場合限定ですが、洋蘭の置き場と生活空間の間を断熱してしまう方法。これは適度な低温期間と家庭の平和の両方を確保できる最良の方法だろうと思いますが、一般家庭では設備的にちょっと難しいです。私もやったことがありません。

 以上の方法を状況に応じて使い分ければ良いと思いますが、どれも手間やリスクのある方法なので、結局私はノビル系デンドロビウムやシンビジウムの花を咲かせることをほぼ諦めました。秋に穏やかに気温が下がった年だけ花を楽しみ、低温期間が足りなくて花芽が出来なかった年は、観葉植物の代わりとして割り切っています。


◆高気密住宅に向く種類、向かない種類◆
 これまで書いた条件を総合すると、高気密住宅での栽培の向き不向きは、以下の基準を基に判断できると考えられます。

-高気密住宅に向く種類-
①20℃以上が生育適温
②空気の乾燥に耐える
③低温に遭遇しなくても花芽をつける
 以上の3点すべてに当てはまる種類。

-高気密住宅に向かない種類-
①高温に弱い
②高い湿度が必要
③低温に遭遇しないと花芽をつくらない
 以上の3点のうち一つでも当てはまる種類は、ただ窓辺に置くだけでは育たないと思った方が良いでしょう。しかし、設備を工夫して問題を克服すれば、全く栽培できないわけではありません。

◆高気密住宅での栽培に向く種類、向かない種類の一覧表◆

 これは私が栽培して感じた私見なので、この限りではない場合もあるかもしれませんが、おそらく大きな間違いはないと思います。洋蘭と呼べなさそうな種類も含まれていますが、参考までに。
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(表をクリックすると、拡大画像が表示されます)



◆まとめ◆


 このページでは、栽培書などにはあまり取り上げられていない、高気密住宅での洋蘭栽培のメリット、デメリット、そしてうまく育てるポイントについて取り上げました。

 栽培書の多くは、洋蘭を生産されているプロの方が書かれているので、どうしても設備が整った温室内での栽培方法が基準になっていることが多いと感じます。もちろん、詳しい栽培方法はプロの方に伺うのが一番間違いないのですが、そうした方々にとっても意外と「想定外」な栽培環境のひとつが、北国以外ではそれほど一般的でない「高気密住宅」だと思うのです。

 事実、私が高気密住宅である自宅で洋蘭を育て始めた頃、栽培書や某テレビ番組の園芸コーナーの解説を基に管理しているのに、なぜかどうしても育たない種類があることに気付きました。その理由が、これまで書いたような理由によるものだと気付いたのは割と最近の事で、それまでに多くの洋蘭を枯らしてしまいました。

 きっと私以外にも、少なくない方が同様の事で悩まれていると思いますが、このページで書いたような内容を紹介している書籍やウェブサイトはほとんど見当たらなかったので、私の少ない経験をもとに、このコーナーを作りました。

 栽培環境は人それぞれ違うので、十把一絡げに語ることは出来ませんが、このコーナーが、似たような環境で洋蘭栽培に取り組まれている読者の皆様への参考になれば嬉しく思います。

                 2013年2月28日、Planter

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